仮想通貨詐欺でよくある手口とは?被害にあわないために注意したいこと
近年増加傾向にある仮想通貨詐欺でよく使われる手口を詳しく解説します。
仮想通貨詐欺には、一般的な詐欺と同様の手口のほか、仮想通貨ならではの手法もあります。
高齢者が被害にあうイメージがありますが若年層へも被害が拡大傾向にあります。ここではすべての年代に向けて、仮想通貨詐欺にあわないために注意すべき点や、被害にあってしまったらどうすればいいかも合わせて紹介します。
目次
仮想通貨詐欺の相談件数
「仮想通貨元年」と言われた2017年を境に、仮想通貨(暗号資産)に関する相談件数は急激に増加しました。
「PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)」に登録された仮想通貨に関する相談件数は、上図のように年間3,000件前後で推移しています(2021年度にシステムの改訂が行われたため、2020年度以前と2021年度以降では時系列の比較はできません)。
年ごとに多少の増減はありますが、全体として増加傾向にあると言われています。
日本だけでなく、海外でも仮想通貨詐欺は増加しています。 アメリカでは、2021年1月から2022年3月の間で詐欺被害額が10億ドル(約1340億円)というレポートも発表されており、2018年と比較して被害額はおよそ60倍になっています。
仮想通貨詐欺でよくある手口
仮想通貨詐欺にはいろいろありますが、その手口は年々変化し巧妙になっています。 ここでは代表的な手口を紹介します。
高配当を約束する
仮想通貨に限らず、詐欺の手口として多用されている代表的なもので、100年以上前に考案されています。
アメリカの天才詐欺師と言われたチャールズ・ポンジの名前を取り、「ポンジ・スキーム」とも呼ばれます。 高い配当を約束して資金を振り込ませ、そのまま行方知れずになるケースもよくあります。
この手口では、初めの数回は本当に配当金が振り込まれることがあるため注意が必要です。しかし、振り込まれる配当金は実際に運用して出た運用益ではなく、新たな出資者からの出資金であることがほとんどです。
さらに、振り込まれた配当金も「運用していた口座が凍結された」などと理由を付けて出金もできないケースが多いです。
また、「友人を紹介すると高額の紹介料を支払う」という紹介制の詐欺も、ポンジ・スキームのひとつです。
【事例】
デマを流す
「風説の流布」と言われる手口で、投資詐欺の代表的な手口です。 なんの根拠もなく、「仮想通貨○○は半年後に価格が100倍になる」などのデマを流し、それを信じて購入者が増えて実際に価格が上がった瞬間に詐欺師は売り抜け、購入者には価値のない仮想通貨だけが残る、という詐欺です。
この詐欺では、詐欺を行うつもりがなくても自分の発言が原因となってしまうことがあります。「この仮想通貨の価格が上がるらしい」など、安易に発言をしないよう注意しましょう。
【事例】
ICOプロジェクト詐欺
最近は下火になっていますが、「8割が詐欺案件」とも言われるICOプロジェクト詐欺にも気を付けましょう。「トークンセール」とも呼ばれています。 ICO(Initial Coin Offering)とは、「企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称」(金融庁HPより)です。
資金調達のために企業がトークンを発行し、投資家が仮想通貨でトークンを購入します。企業はその仮想通貨を換金し、資金を調達して事業を興します。事業が成功して企業の価値が上がるとトークンの価値も上がり、投資家に還元されます。
これは、企業が資金調達や知名度向上を目的に新規に株式を上場し、投資家に株式を取得させるIPO(Initial Public Offering:新規公開株式)と似た仕組みです。
ICOプロジェクト詐欺では、実際には事業が行われなかったり、企業と連絡がつかなくなったりします。
「ホワイトペーパー」と呼ばれる事業計画書が作成されるため、それを確認して安心してしまう人が多いですが、その事業が詐欺目的なのかどうかを見極めるのはとても難しいです。
【事例】
SNS、マッチングアプリを利用した詐欺
SNSやマッチングアプリを利用した仮想通貨詐欺の被害は、若い世代に増えています。
「SNSやマッチングアプリを通じて知り合った相手に仮想通貨取引を持ち掛けられ、投資したが出金できなくなった」という詐欺が代表例です。
また友人や知人から偽の仮想通貨の投資セミナーに勧誘されるパターンもあります。その場合、友人自身も騙されている可能性があります。
そのほか、SNSやアプリを通じて知り合った外国人の恋人に送金を要求される「ロマンス詐欺」も増加しています。
【事例】
無登録業者による勧誘
日本国内で仮想通貨を販売できるのは、金融庁に「暗号資産交換業者」として登録されている事業者だけです。
金融商品取引法に基づいた登録を受けていない「無登録業者」による投資勧誘は、詐欺の可能性が高いので注意しましょう。特に海外の暗号資産交換業者が詐欺的な投資勧誘をするケースが増えています。
仮想通貨に関連する投資の勧誘を受けた場合、登録されている業者かどうか確認しましょう。登録業者については、金融庁のサイト内「免許・許可・登録を受けている業者一覧」で確認できます。
【事例】
フィッシング詐欺、なりすまし詐欺
フィッシング詐欺とは、実在する人物やサービスの名を騙って電子メールを送りつけたり、偽のホームページに接続させたりして個人情報を盗み出す行為です。
なりすまし詐欺とは、特定の人物になりすまして金銭をだまし取ろうとする行為で、代表的なものに「オレオレ詐欺」があります。
これらは一般的な詐欺の手口として有名で、仮想通貨詐欺では、取引所などを名乗って仮想通貨での支払いを求めてくるケースが多いです。
【事例】
仮想通貨詐欺のターゲットは若年層に?
上記は、仮想通貨に関する相談を集計したデータです。
2018年ごろから、30歳代以下の相談割合が増加しており、詐欺のターゲットが高齢者から若い世代へ移ってきていることがわかります。
「貯蓄から投資へ」という国の呼びかけや、年金問題など金銭的な不安に加え、SNSの普及も原因のひとつと言われています。
若い世代には、リアルでは知らない相手とSNSなどでやり取りすることに抵抗のない人が多くいます。
しかし、オンライン上での繋がりは本人確認や話の真偽を確認するのがとても難しく、連絡を絶つことも容易なため、被害者が泣き寝入りしてしまうケースがほとんどです。
2020年には、社会人1年目の女性が仮想通貨の投資詐欺を苦に自死を選ぶという痛ましい事件も起きています。2022年から成人年齢が18歳に引き下げられたことで「より若年層の被害が拡大するのでは」と考えられています。
仮想通貨詐欺の被害にあわないために
年々手口が巧妙になっている仮想通貨詐欺の被害に合わないために、次の点に注意しましょう。
仮想通貨の投資話はまず詐欺を疑う
たとえ友人であっても、仮想通貨の投資話はまず「詐欺かもしれない」と疑ってください。友人も騙されている可能性があります。人間関係と投資話は切り離して考えましょう。
SNSやマッチングアプリで知り合った人など、オンライン上での知り合いから勧められた場合は特に注意が必要です。本人確認や事実関係の確認が難しく、連絡を絶たれやすいため、詐欺にあってしまうと金銭の回収はとても難しいです。
また、仮想通貨詐欺に限ったことではありませんが、「今なら新しい暗号資産を購入できる」「仮想通貨は値動きが激しいが、今すぐに投資すれば儲かる」など、決断を急がせるものは詐欺の可能性が高いです。
暗号資産交換業の登録がされているか確認する
「仮想通貨詐欺でよくある手口」で解説した通り、日本国内で仮想通貨を販売できるのは金融庁に登録された業者のみです。
登録の無い業者が行う仮想通貨取引は違法です。無登録で金融商品取引業を行っている業者へは、金融庁が警告を出しています。
実際にお金を払う前に、必ず確認しましょう。
理解できない話には乗らない
仮想通貨は比較的歴史の浅い通貨であり、オンライン上で完結する、今までにないものです。仮想通貨について理解していない場合、詐欺師の使う専門用語に騙されてしまうことがあります。
また、金融庁に登録されている交換業者でも、取引による資産消滅のリスクなど取引内容がしっかり理解できない話には乗らないようにしましょう。
もし詐欺にあってしまったら、抱え込まずに相談しよう
「あやしいな」と思ってからでは遅いこともあります。
「仮想通貨」「暗号資産」というワードが出たら、どのような話や相談でも即決せず、必ず自分で納得がいくまで調べましょう。
もしも詐欺にあってしまったら、ひとりで抱え込まずに下記にできるだけ早く相談してください。
①仮想通貨追跡やトランザクション調査に強い調査会社
足取りが追いにくい仮想通貨詐欺では、一刻も早く取引データを追うことが大切です。 トランザクション調査に強く、すぐに動いてくれる調査会社に依頼することが早期解決につながります。
②詐欺事案の取り扱い経験が豊富な法律事務所
一部の法律事務所は、仮想通貨詐欺に対応しています。
ただし法律事務書に依頼した場合も、まず資金の滞留先の調査が必要となり、結局は調査委会社への依頼が必要になるケースが多いです。
また費用は調査会社よりも高額となることが多いです。
③消費者センターや国民生活センター
消費者センターや国民生活センターは無料で相談できるので、気軽に連絡する場所としてはよいかもしれません。しかしトランザクションの追跡を行ったり、騙し取られたお金を取り戻したりしてくれることはありません。
④警察
詐欺の被害にあった時にまっさきに思いつく相談先は警察かもしれません。
ただ、仮想通貨詐欺の場合、警察では相手の身元特定は難しいため、証拠不十分として被害届を受理してもらえないことが大半です。
そもそも警察は「民事不介入」が原則のため、返金交渉などを依頼することはできません。
積極的な調査を依頼して返金してもらいたい場合は、仮想通貨詐欺に強い専門的な調査会社への依頼がおすすめです。